人一倍、しっかりしなくては生きてこられない人生だったけれど、本当はもっと子どものように甘えたかった、かわいがられたかった。
その思いが残っているのです。 暴言を吐く人は、ずっと理性で我慢を続けてきたけれど、お腹の中では「ちくしょう」と思ってきたのかもしれません。 そんなふうに、認知症の症状はその人の悩みや苦しみ、果たしたくても果たせなかつた思いを正直に表わします。 家族にとっては驚きであり、ときに幻滅したりするかもしれません。
けれど、決して悲しむべきことでも幻滅するようなことでもありません。 親や祖父母もまた、あなたと同じように、数多くの苦しみを乗り越えて生きてきた1人の人間です。
その生き様をよく理解してあげてください。

ずっと隠されていたその思いに気づき、「そうだったのね」と寄り添ってあげてください。 そうすれば自然に、介護するときの思いも変わってくるはずです。 認知症もまた、マイナスだけの現象ではありません。
そこに秘められた、人のせつない思いを読みとれるかどうか。 家族の想像力と愛が、試されているのです。

認知症の介護の場合も、自分の器以上のことをしようとは考えないこと。 それぞれ抱える事情も、精神力も体力も違います。 無理をしてもいい結果にはなりません。 認知症になっても本人のたましいはすべてを記憶しています。認知症の症状は、その人の悩みや苦しみ、表わします。 決して幻滅するようなことではありません。

1人の人間としての生き様や隠されてきた思いを理解し、そっと寄り添ってあげてください。 家族や友人など、大切な人が事故で突然亡くなったとき、ついさっきまで元気だった姿を目にしているだけに、信じられないという思いでしょう。
交通事故など、肉体の損傷が激しい場合は、悲しみも深くなると思います。 老衰で眠るように亡くなる場合と違って、気持ちの整理の仕方、供養の仕方に戸惑う人の声をよく聞きます。 この本でも何度か書きましたが、死は決してつらいことではありません。 病死でも事故死でも同じことです。

死は人生という旅を終えたということ。 すべての苦痛からの解放でもあるのです。

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